秋田市の女性が、市内の寺で編み物を楽しむサロンを開いている。1本の糸が何色にも染められている毛糸で作品を作り続ける女性の思いに迫った。
秋田市旭北寺町にある妙覚寺。寺の中で編み物を行う「編み寺」というサロンを開いているのは、市内に住む高畑美幸さんだ。
高畑美幸さん:
「寺は全てを包み込んでくれるような懐が深いところがある。趣味で寺や神社に行くのが好きだが、心が落ち着くので、寺の中で編んだら楽しいだろうと思い『編み寺』を始めた」
寺という日常から少し離れた落ち着いた空間で、編み物の愛好家とともに思い思いに糸を編んでいる。
秋田市楢山にある高畑さんのニットカフェ。編み物をしながらコーヒーを飲んだり、おしゃべりを楽しんだりできる空間を提供しようと、2011年にオープンした。
常連客の女性は「コロナ禍の前から6~7年くらい通っている。編み方で分からないところがあっても、いつでも教えてもらえる。心のオアシスです」と笑顔を見せた。
高畑さんのカフェには、色鮮やかな「オパール毛糸」で作られた作品が所狭しと並んでいる。
小さい頃から編み物が大好きだったという高畑さんが店を始めたきっかけは、日本中を震撼(しんかん)させた大災害だった。
コーヒー&ニットIVY・高畑美幸さん:
「2011年3月に東日本大震災があり、あの時の痛ましい映像を見て『やりたいことがあるならできるうちにやろう』と飛び込むような気持ちで始めた」
高畑さんは、オパール毛糸を震災で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市の店から取り寄せ、作品を作り続けている。
なぜ気仙沼なのか。現地でニット製品の会社を立ち上げた、ドイツ出身の編み物作家・梅村マルティナさんの復興支援活動に共感したのがきっかけだ。
10年以上にわたって、復興への思いと幸せを願いオパール毛糸を編み続けてきた高畑さん。2021年に毛糸で「絆タペストリー」を完成させるプロジェクトを立ち上げたところ、全国各地から10センチ四方の作品が1000枚も集まり、日本の絆を証明できた。
コーヒー&ニットIVY・高畑美幸さん:
「『もう復興できないかも』とか、『もう立ち上げれないんじゃないか』という不安もあったと思うが、みんな一人一人が力を合わせれば大きな力になるんだと思った」
オパール毛糸を使い続ける理由を聞くと、「この糸が楽しい。編んでいるとみんながにこにこして編む。とても幸せな気持ちになるのでこの糸を使い続けている」と語った。
2023年7月には、高畑さん自身が記録的な大雨で浸水被害を受けた。そのときも助け合う心は忘れなかった。
コーヒー&ニットIVY・高畑美幸さん:
「弱いから助けるのではなく、みんなで同じ目線で助け合っていきたい。もし秋田が今後、被災地になった時には、全国の皆さんに『助けて』と言えるように力をつけていきたい」
「編み物は世界を救う」という言葉を胸に、高畑さんはこれからもたくさんの思いを紡いでいく。
※高畑美幸さんの「高」は「はしご高」