区民ひとり一人の思いに寄り添い、「区民の幸福(しあわせ)」、すなわち、ウェルビーイングを推進する視点から、令和6年度予算では、区民の不安や不満などの「不」を取り除き、未来に希望が持てる社会をつくるため、「しながわウェルビーイング予算」を編成いたしました。
また、区政の全665事業を対象とした事務事業評価を実施することにより、事業のスクラップ・アンド・ビルドや無駄の削減を行い、「一般会計予算の1%、20億円」の財源を捻出することができたところです。
強固で弾力的な財政基盤を堅持しつつ、事務事業評価等により捻出した果実をウェルビーイング向上につながる事業へと振り向けるべく、また防災等への備えなどの観点から、必要な事業に大胆かつ重点的に配分を行う戦略的な予算編成を行った結果、一般会計で前年度比プラス2.4%の2,036億5,600万円と、過去最大の当初予算。
なお、予算編成にあたっては、令和5年8月に実施し区民の皆さまにご協力いただいた、全区民アンケートの調査結果を分析し、区民の皆さんが自分らしく幸せに暮らしていくために、特に重要だと考えることについて整理をしました。全区民アンケートへのご協力、ありがとうございました。
ご協力いただいたアンケート結果を踏まえ、令和6年度予算は、真に「区民の幸福(しあわせ)」につながる予算として、
「安全・安心を守る」
「社会全体で子どもと子育てを支える」
「生きづらさをなくし、住み続けられるやさしい社会をつくる」
「未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる」
という
4つの柱に基づき、ウェルビーイング予算を編成。
[安心・安全]
能登半島地震で顕在化したさまざまな課題をとらえ、自助、共助を促す観点から、断水時などに必須となる携帯トイレを1人20個、全区民に無償配布をいたします。これは3日分の想定となります。来年度、改定する「しながわ防災ハンドブック」と一緒に配布をすることで、在宅避難も含めた防災啓発を行っていく考えです。
また、マンション防災の観点から、エレベーターの閉じ込め対策として、希望する共同住宅に飲料水や食料、非常用トイレ等を備えた、エレベーター用防災チェアの無償提供を実施。
減災の取り組みとしては、木造住宅の耐震診断助成の補助率を10分の10に引き上げるなど、住宅の耐震化を加速させるほか、地震時の電気火災を予防する感震ブレーカーについては、区独自の設置助成を区内全域に対象を拡大。
また、区、自らの備えとしても、飲料水や食料、生活必需品の備蓄はもとより、女性視点での備蓄や避難所運営の見直し、ペット同行避難を前提とした資機材などの備蓄の強化に取り組んでいくほか、地域防災力の向上に向けた、多様な主体が参加する新たな共助の枠組みづくり、新たな防災訓練のかたちをつくってまいります。
防災関連予算、既存のものも含めますけれども、総額57億円。
次に、犯罪等のリスクから区民を守るため、住まいの防犯対策として、個人住宅への防犯カメラ・録画機能付きドアホンの設置に係る費用助成を新たに開始。
65歳以上の高齢者のインフルエンザワクチンについては、接種費用を無償化し、感染症からの不安を解消できるよう支援。
さらに、地域のコンビニエンスストアと連携し、AED設置拡大の大幅拡充を図るなど、多角的な視点から、区民の安全・安心守ってまいります。
[社会全体で子どもと子育てを支える]
まず1点目は、義務教育にかかる経済的負担の軽減を図る観点から、来年度、新たに、書道用具、絵の具、ドリルなど副読本等、必ず授業で使う学用品、いわゆる補助教材費について、所得制限のない完全無償化を実施をいたします。これは都内初となる取り組みであり、「子育て・教育で選ばれるしながわ」に向けた施策を加速。
すまいるスクールにおける長期休暇中の昼食については、今年度、仕出し弁当の導入を夏休み期間中にモデル実施し、課題の検証を行いました。来年度は、全すまいるスクール37カ所で、夏休み期間中の仕出し弁当配達を実施し、保護者の負担軽減を図ってまいります。
次に、他自治体に先駆けモデル実施している未就園児の定期預かり事業を、来年度は22施設に拡大して本格実施。
また、本年10月、子どもや子育てを支援する最前線の拠点として、区立の児童相談所を開設するため、その準備を加速。
また、産後に体調不良や不安を抱える方はもとより、すべての方が心身のケアや育児サポートを受けられるよう、「産後ケア事業」の対象者や利用回数を拡充するとともに、ケアメニューの充実や自己負担を軽減。
HPVワクチンについては、女性の接種率向上に向けた勧奨を進め、新たに男性の任意接種への助成を実施し、集団免疫の向上などを図るべく促進。
また、不妊治療に係る区独自の助成制度を新設し、安心して子どもを産み育てられる社会の実現を目指。
[生きづらさをなくし住み続けられるやさしい社会をつくる]
福祉を支える人材の確保についてです。介護を担う職員の収入が他の業種と比較して低いこと等から、人材不足が顕著となり、処遇の改善が喫緊の課題となっています。来年度、東京都が創設する予定の介護職員等居住支援特別手当と連動する形で、介護職員・障害福祉サービス職員等に対し、都制度に上乗せを行う区独自の手当を創設します。具体的には月1万円の上乗せ助成です。
ひとり暮らしの65歳以上の高齢者や障害がある方を見守る観点から、緊急安否確認サービスを希望する対象区民へ所得制限によらず、無償でサービス提供。
また、18歳未満の障害児の補装具・日常生活用具の購入費助成についても、国に先駆け、所得制限を撤廃。
中等度難聴の高齢者の補聴器購入費助成につきましても、所得制限を撤廃し、「聞こえ」を支援。
認知症対策につきましては、その早期発見を図るため、頭の元気度チェックの対象年齢を50歳以上に引き下げるとともに、認知症の疑いがある方への相談機能を強化すべく、新たに伴走型支援拠点を整備。
障害等により長時間の就労が難しく、働く意欲があっても就労に結びつかない方を対象とした、超短時間就労の雇用の創出に向けては、来年度は就労希望者と区内企業とのマッチングを行うなど、取り組みを加速。
デフスポーツの啓発イベントや、手話講座等を実施するほか、デジタル技術を活用して、言語を「見える化」する音声翻訳表示ディスプレーを本庁舎の総合窓口に設置。
医療的ケアが必要な児童への支援としては、医療的ケア児等コーディネーターが、NICUから在宅移行や福祉サービスの利用など、ライフステージを通じた切れ目のない支援を提供できるよう体制整備。
子どもが抱える課題についてですが、現在、学校現場では、特別支援学級に在籍する児童生徒の増加、いじめや不登校児童生徒の増加など、多くの課題に直面しています。これらの課題に対処すべく、新たに各種施策を展開。
発達障害教育支援員については、全小学校へ配置。
不登校への対応としましては、校内別室指導支援員の全区立学校への配置、メタバースを活用した登校支援や、不登校になった際の居場所や相談機関等の情報を掲載したポータルサイトを新規に開設。
いじめについては、教育委員会と区長部局が連携した総合的対策として、教職員専門研修の実施や弁護士等の配置など、いじめ防止対策の強化。
孤独・孤立対策については、今年度、内閣府の地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業に、都内初で採択され、区内の実態調査などに取り組みました。来年度は、孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会の構築に向け、関係機関による協議会を設置し、区民の理解と周知を進めるためのシンポジウムを開催するなど、取り組みを前進。
また、社会的な課題となっているヤングケアラーにつきましては、今年度、ヤングケアラー支援として、コーディネーターの配置やピアサポートの実施、アンケート調査やSNSによる相談を実施しました。来年度は新たに配食サービスや、日本語が苦手な親の通院などへの通訳者の同行、学習支援やキャリア相談等の支援拡充を図ります。
[未来に希望の持てるサステナブルな社会をつくる]
使い捨てプラスチックの削減については、マイボトル給水スポット増設に向けた助成制度の創設や、製品プラスチックの回収の区内全域での本格実施をスタート。
また、屋上やベランダ等で野菜を育てる材料費等の助成を開始するとともに、3カ所目となるマイガーデンの整備など、グリーンインフラの整備に積極的に取り組んでまいります。
交通の脱炭素化と地域交通機能の充実については、新たな交通インフラである「グリーンスローモビリティ」や「AIオンディマンド」の導入について、実証実験等を進めてまいります。
中小企業に対しては、引き続き融資あっせんを行うとともに、物価高騰等の経営環境の変化に対応できるよう、販路拡大の促進や従業員の能力向上、働きがいの創出に繋がる人材スキルアップ支援等を行います。
また、女性起業家にテストマーケティングの機会を提供するとともに、小中学生を対象とした起業家マインドやアントレプレナーシップを育む、講座を開催するなど、スタートアップ支援にも注力してまいります。さらに、今後の中小企業支援策について、先進自治体等の取り組みを研究するなど、中小企業センターのあり方も含め、検討。
品川の顔であり、活力の源でもある商店街については、プレミアム付区内共通商品券を発行し、区内経済と消費を喚起してまいります。とりわけ年度をまたいだ切れ目のない経済対策として、令和5年12月の臨時会で議決いただいた「春季プレミアム付区内共通商品券」および「キャッシュレス決済を活用したポイント還元事業」も来年度の当初より実施することで、区内経済を強力に後押。
次に、スポーツの力を生かしたまちの魅力発信。
令和7年3月の「しながわシティラン」の開催に向け、着実に準備を進めてまいります。
女子日本代表さくらジャパンのパリ2024オリンピックへの出場が決定したホッケー競技については、区は、昨年11月に日本ホッケー協会より「公式ホッケータウン」に認定。来年度は、昨年に国際友好都市30周年を迎えたオークランド市を通じて、ニュージーランドとのホッケー交流事業や区民参加型イベント等を開催し、ホッケーを通じたまちづくりを進めてまいります。
また、区民にとって一番身近なコミュニティである町会・自治会も、まちのにぎわい向上や地域課題の解決に不可欠な存在です。町会・自治会がNPOなどの団体などと協働して行う取り組みへの後押しとして、「地域力連携促進補助金」を新たに創設。
品川の有する大きなポテンシャルのひとつである、水辺空間の利活用についてです。昨年、試行実施した舟運については、通年運行を目指し、水辺の魅力向上、にぎわい創出に努めてまいります。
次に、人と動物が共生できる環境づくりについてです。地域猫については、これまでの町会・自治会のモデル事業に加え、個人グループ単位での活動を可能とする活動協力員制度の創設や各種助成の増額を図ります。
ふるさと納税による区の減収額は毎年増えています。国に対して制度の抜本的な見直しを継続的に行うとともに、財源確保の観点から、地元企業等と連携し、地域資源等を活用した体験型の返礼品の開発や、多くの方から理解・共感を得られる応援プロジェクト型の事業への寄付募集等を積極的に推進してまいります。
[職員提案制度]
区民ニーズに近く、現場に通じる若手職員等のアイデアや柔軟な発想、自身の体験などを踏まえたもの。アイデアを施策に生かすべく、新たに職員提案制度を創設。
区施設に液体ミルクや紙おむつ等の自販機、おむつの真空パック装置を設置するほか、親子で気軽に休憩できるスペースを設置するなど、9事業を新たに予算化し、来年度の施策として形にしていくことで、区民ニーズの具現化はもとより、職員や区組織の、政策形成能力の向上を推進。