米どころ福島県の会津地方では収穫の最盛期を迎えているが、米はこれまでの猛暑の影響を受けている。暑さで米が白く濁る高温障害が起きていて、品質に影響が出ている。
福島県会津坂下町の米農家・小林和弘さん。約40ヘクタールの田んぼでコシヒカリや酒米などを栽培していて、今が収穫の最盛期。現在は「天のつぶ」の収穫を行っている。「収穫の秋」を迎えたが、連日続いた暑さに不安を感じていた。小林さんは「この気温で高温障害が出るっていうのは、覚悟していたんで、じゃそれがどの位の割合かというのは正直かなり心配していました」と話す。
米を収穫した小林さん。機械でもみ殻が取り除かれ、その後は米を識別する作業を行う。
福島テレビ・浅野晋平記者:「こちらの機械でコメの色彩を光センサーで識別し、白く濁ったコメや日焼けしたコメはこちらのバケツに取り除かれ、透き通ったコメはこちらで袋詰めされ、消費者の元に届けられます」
機械に通すと、高温障害と識別された米がバケツに入っていく。高温障害の米は例年だと全体の約2割。しかし、今年は3割に増加した。小林さんは「お盆前後の暑さが一番実が太くなる時に、白く濁らせた原因かなと思います」と語った。これらの米は出荷は出来ず飼料米となる。通常の米に比べると、半値程度での取引となる。
出荷出来た米にも例年と違う変化があった。形が整っているか、色がついていないかなどで米は「一等」「二等」「三等」に分けられる。2022年は全て「一等」だったが、2023年は約3割が「二等」となった。「二等」になれば、取引値は一俵1200円から1400円ほど下がる。小林さんは「作るからには、やっぱり1等に春先から懸けてきているので、どうしても2等になってしまうと少しガッカリはしちゃいます」と話す。
長期間続いた猛暑に「この状況よりも酷い被害を想定していた」と話す小林さん。しかし、肥料や燃料など生産にかかるコストは、2022年と比べ3割ほど上昇していて、品質の低下は見逃せない問題だ。
小林さんの田んぼでは、暑さでコメが乾燥して割れないように収穫が急いで行われ、11月15日頃までに終わる予定だ。
<暑さがなぜコメの出来に影響?>
この時期は、新米を楽しみにしている方も多いと思う。今年は、本当に暑かったので米にとってもダメージが大きかった…そもそも、なぜ暑さで米に影響が出ているのか。
電子顕微鏡で見た「高温障害を受けた米」白く濁り、ところどころに隙間があるのがわかる。
福島大学・食農学類の新田洋司教授によると、米を炊く時にこの「隙間」に水が入ってしまうので、炊き上がりが「べたっと」してしまい、食味に影響が出るということだ。品種や場所にもよるが、穂が出てから20日間の一日の平均気温が23度から24度を超えると濁りが発生し始め、27度を超えると2割くらいが濁った米になるということだ。
<一等米の比率>
農林水産省によると、8月末の時点で全国で収穫されたコメの一等米の比率は68.9パーセント。例年だと、このあとに東北や新潟の品質のよい米が比率を押し上げるが、今年度は新潟など日本海側を中心に「高温・少雨の影響を受けた」という情報も入っていて、この比率が上がらない可能性も出ているということだ。
そして、福島県産の米は例年9割が一等米の評価を受けているが、現時点では7割にとどまっている。猛暑に耐えた米、よい評価に繋がる事を願いたい。