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折れたバットに再び光を
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ペン立てに靴べら、孫の手…。折れた木製バットを多様な日用品に再加工する。付加価値を持たせて廃棄物を生まれ変わらせる「アップサイクル」と呼ばれる取り組みで、近年プロ野球チームや大手スポーツ用品メーカーなどが進めるが、ある野球ファンの男性は熱の入れようが違う。本業の傍ら、趣味の域を超えてバットの再生に〝フルスイング〟。愛してやまない野球とともに、社会貢献をしたいという。  大阪府門真市の家具製造会社「岩本商会」。2階の一角に、折れたバットや再加工品の数々が並ぶ。ユニホームやプロ野球選手の直筆サイン、各種グッズも飾られ、まさに「野球部屋」。野球好きにはたまらない空間だろう。  「聞きつけて半日ほど居つく人もいますよ」  そう言って笑う部屋の主は、同社営業部長の田中伸佳さん(46)。プレー経験こそないが、ひいきのチームを応援すべく、小学生の頃から甲子園球場(兵庫県西宮市)などに一人で通った野球好きだ。  約3年前、取引先の工場で折れたバットが山積みで放置されているのを見た。「捨てられるバットを生かせられないか」。木材と縁のある業界に身を置くが、自身は木材加工の素人。社内外の職人から教えを乞うた。譲ってもらったバットを木工機械で輪切りにし、くぼみも付けてボールを飾るスタンドを作った。元来の工作好きで、一気にのめり込んだ。  材料のバットを得るため、営業力を生かして関西の大学、社会人チームを飛び込みで回り、不要なバットを無料で回収。処分にも費用がかかるため、申し出ると歓迎されたという。  木材加工の力で第二の使い道をー。ほどなく、折れたバットから作った品々を持ち主や依頼者らに届ける「Bーride(ビーライド)」を立ち上げ。バットの「B」とボールを載せる「ride」を組み合わせた。造花挿しやペン立て、バットのグリップがそのまま持ち手になる靴べらなども手掛けるようになった。  再加工では、まずバットを洗浄し磨くのが基本だ。次に裁断。同社工場(同府大東市)で行うが、バットが回転しないように「点」で押さえるなどの注意を払う。慣れれば、靴べら1本が約1時間でできあがる。  交流サイト(SNS)のインスタグラムで完成品を発信すると、野球経験者らから依頼が舞い込んだ。「『思い入れのあるバットを捨てるわけにもいかず、形に残したい』と考える人がいると知った」(田中さん)  あくまで善意のため、送料以外は取らない。令和4年秋には、当時プロ野球・中日ドラゴンズ捕手の桂依央利さん=現日立製作所野球部コーチ=から「みんなに喜んでもらえるなら」とインスタグラムでメッセージがあり、折れたバット約40本の提供を受けた。  「道具を大切にする野球人の思いに応えたい」と靴べらやキーホルダーに加工、桂さんやファンらに贈った。桂さんは、社会人野球に転向してからもバットを送り続けてくれている。  田中さんは最近、和歌山県の木工房と協力してグラブのパンチャーも作るように。パンチャーとは、グラブのポケット部などをたたき、本体を柔らかくしたり、型付けしたりするために使う道具。もともと木製品が主流のため、バットは材料として最適なのだ。オリジナルのパンチャーにはグラブ愛好者からのオーダーが相次ぐ。  「物を大切にする理念を共有できて、同じ野球好きに活動を受け入れてもらえているのが一番うれしい」。持続可能な開発目標(SDGs)にもつながる取り組みだが、社業ではないため携わるのは田中さんのみ。将来的な事業化を見据えているが、バットの供給や再加工が追い付かないのが現状という。  当面はインスタグラムでオーダーを受け付け、無理のないペースで対応していく。いつかプロ野球選手とファンをつなぐ存在になれたら、と夢見ながら。

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