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「ケーキは買うな」「温泉行くな」成年後見人が生活の切り詰めを迫る理由→“報酬は貯金に比例”
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あなたの家族が第三者に生活を切り詰めるよう厳しく迫られ、それにモノ言うこともできなければどのように感じるだろうか。「ケーキはいらないから買うな」「温泉に行って病気は治るのか?医者から証明書をもらって」これらは“成年後見人”から家族に投げかけられた言葉だ。後見人の報酬は担当者の預貯金に比例することが背景にある。制度は一度利用すると原則、止められない。約24万人が利用する成年後見人の制度は横領被害などのトラブルが相次いでいた―。 ◆自分の報酬が少なくなるから使わせない構図 「こんな理不尽はない。正直言って後見制度って何?って」こう憤るのは、大分市に住む阿南貞子さん(69)だ。夫の浩直さんが12年前、仕事中に脳梗塞で倒れ成年後見制度を利用することになった。後見人についたのは司法書士。必要以上に切り詰めた生活を求められたという。 阿南さん「甘いものを好きな夫にケーキを買うと『こんないらないものは買わないでください』と。甘いものが一番おいしいと本人が食べたがるのでそう言ったら『無視してください』と」 阿南さんのように後見人から必要以上に生活を切り詰められるケースは少なくない。 後見の杜・宮内代表「後見人がもらう報酬は後見される人の預貯金額に比例します。使えば使うほど自分がもらうものがなくなるから使わせない。のみならず、保険を解約して預貯金を増やす、家を売って預貯金を増やす。報酬のメカニズムが背景にあります」 ◆横領の被害は10年間で約289億円 阿南さんは、夫の浩直さんを温泉に連れて行こうとした際に後見人からこう言われた。 阿南さん「障害者を受け入れる旅館やホテルを探したらいい値段になる。後見人にお願いすると『温泉に行ったから病気は治るんですか』と。『治るって言うなら医者から証明書もらって提出してください』と」 成年後見制度は、一度利用すると原則止められない。家族の意思による後見人の交代も認められていない。 後見の杜・宮内代表「後見は家族以外がやる場合は、ビジネスでやっていることになる。何をやってもやらなくても、あんまりもらえる金額は変わらない。そうすると本人に会いに行かないとか、健康面は関係ないとか、私は財産しかみない、よしこれは売れるから売ろうとか、そういう職業になる」 生活を切り詰めるよう迫った浩直さんの後見人は辞任し、弁護士が代わりに就いた。浩直さんの財産状況や後見人に支払われている報酬は明かされない。新しい後見人は、浩直さんに会ったことすらないという。 阿南さん「寄り添ってくれない。いまだに一度も会いに来てくれませんよ。赤の他人様が仕事もしないでどんどん報酬をもっていって。誰が一番喜んでいるんですかこの制度。家族じゃないですよ、本人じゃないですよ」 成年後見制度をめぐっては、もうひとつ“横領事件の多発”という深刻な問題がある。最高裁の調査によると、2011~21年にかけて後見人などによる横領などの被害は約289億円に上る。取材した福岡県でも制度の普及も進めていた「後見人」が関与したとみられる悪質な事件が起きていた。 ◆制度の“旗振り役”が私腹を肥やしていた疑い 福岡県南部の久留米市を拠点とする「NPO法人権利擁護支援センターふくおかねっと」。理事長だった森高清一被告(66)は、複数の高齢者の「後見人」だった。財産を管理していた高齢者2人が死亡後、銀行口座から約1280万円を横領したとして在宅起訴された。制度の勉強会で講師も務めた「旗振り役」はどのような人物なのか、直撃した。 森高元理事長の自宅: 「ピンポーン」「はい?」「RKBの高田と申しますが」「お断りしてまーす」 何度か訪ねたものの、取材には応じてもらえなかった。「ふくおかネット」がこれまでの記録を調べたところ、森高被告に複数の人から計2000万円以上を横領した疑いがあることがわかった。返金を求めると森高元理事長から全額が返金されたという。被害者や親族への返金が終わり次第、法人を解散する方針だ。 ふくおかネットの関係者「残念の一言ですね、信用していたので。被後見人を裏切った。信用して、よくしてもらっていると思っていた方も多いと思う。本当に申し訳ない」 ◆多発するトラブル、国は“後見人の報酬”にメス 高齢者や障害者の生活を支援するための制度の裏で、横領や利用者とのトラブルが後を絶たない。 後見の杜・宮内代表「自分で決める“任意後見”を準備しておくこと。70を過ぎたら、認知症を想定して財産管理を家族に話したり友達に頼んだりする。中立的なところが後見人や監督人などの家庭裁判所の業務が適正に行われているかチェックする。都道府県が委託費を支払う。このような民主的なチェックがない限り、利用者が減る一方だと思う」 報酬が高齢者の預金額に比例するのであれば、必要以上に生活を切り詰めるよう要求するケースはこの先も起きるだろう。一方で、認知症の人を詐欺や不利な契約から守らなければならない。国は後見人の報酬の見直しや相談窓口の整備を進めているが、抜本的な制度の見直しも求められている。

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