1個30円のコロッケなど、地元で愛されてきた精肉店が58年の歴史に幕を閉じました。二人三脚で店を守り続けてきた夫婦は別れを惜しんで訪れる多くの常連客たちの姿に「世界一幸せ」と語りました。
■子へ、孫へ…受け継がれた“地元の味”
最大でおよそ100メートルにも及んだ長蛇の列。その先頭にあったのが、精肉店「肉のやまだ」です。
常連客
「草加市民なら誰でも知っていると思う。ソウルフードじゃないですか」
中学生
「(Q.一番好きなものは何?)一口カツもおいしいし、全部ですかね。全部おいしいです」
肉のやまだ
山田 奨大将(81)
「トンカツあがったぞ。チキンカツは何枚だ?」
長きにわたり、地元の人たちに変わらぬ味を届けてきたのは、大将の山田さんと妻の好子さん(78)です。
山田大将
「くたばるだけだよ、我々は。こんな店に並ぶ必要ねえよな」
「人に使われるのが嫌だ」との思いから、58年前、20代の若さで開業した大将。以来、妻との二人三脚で店を切り盛りするとたちまち地元で評判の店に…。
数あるメニューのなかでも特に人気なのがサクサクジューシーなメンチカツ、お値段は80円。そして、素朴な味わいがやみつきになる「コロッケ」はなんと1個30円です。
小学生の頃から通う常連客
「おなかすいたと言って、お小遣い少ないなか、みんなで行って1個ずつ好きなの買って、50円とか持ってみんなで行って、小学生からしたらすごくありがたかった」
「親と一緒に来てて、そこから自分も来るようになって」
「(Q.娘さんも食べる?)まだ食べられないです。でも息子が食べてて、幼稚園帰りとか寄ってたりもしたんで。(買うのは)コロッケとかです。なくなるのは悲しいです」
子どもの頃に親しんだ味は、子へ、そして孫へと受け継がれてきました。そんなコロッケを一口いただいてみると…。
紀真耶アナウンサー
「じゃがいもの優しい甘さを感じます。おいしい。30円でこれだけボリュームあったら大満足です」
■体力の限界、後継者不在で…
物価高のなかでも、昔ながらの値段を貫いているのは夫婦のある思いからでした…。
山田大将
「中学生とか高校生、小学生がお小遣いで買えるでしょ」
好子さん
「子どもも大事にしないといけません。子どもたちが『うまい、うまい』と宣伝したのが、あの子たちなんです」
地元に根付き、草加っ子から愛され続けてきたお店ですが、先月31日に閉店の日を迎えました。惜しまれつつも、閉店を決断した理由は…。
好子さん
「本当はやめたくないんですけどね。体に限界がきちゃったから」
山田大将
「俺はやめたいよ」
「(Q.どこか悪い所があるんですか?)頭!頭が悪いんだよ(笑)」
こうはぐらかした大将。そして…。
山田大将
「こどもだって、自分の人生だから。これやれって言えないよな」
体力の限界と、後継者がいなかったことで、58年の歴史に幕をおろすことになりました。
■常連客からの鳴り止まない拍手「最高です」
店には、夫婦への“感謝の気持ち”を形で表した人も…。
約30年前からの常連客
「30年くらい、僕の場合はお世話になっていたので。僕は地元を離れて、こっちにいるので、草加のお母さんと勝手に思っていたぐらいなので、すごく寂しいです」
好子さん
「(Q.大変な時はなかった?)ないです。楽しいです。楽しいですよ!こんな楽しい商売ないでしょ。私は日本一、世界一幸せな女です。私はそう思っている」
日が暮れてもなお、途切れない行列。品数が少なくなってきた夕方には学校から帰宅した子どもたちの姿も目立つようになりました。そして、午後7時30分。
スタッフ
「みなさん、本当に、ありがとうございました、長いこと。もうきょう売り切れなので、申し訳ございません。並んでも買えません。長いことありがとうございました!」
鳴り響く拍手。それでも名残りを惜しむ常連客たちが、感謝の気持ちを伝えにやってきました。
ずっと厨房(ちゅうぼう)の奥にいた大将も、客の前に姿を見せると・・
常連客
「娘が手紙を」
山田大将
「読ませていただきます」
常連客
「いつもおいしいコロッケをありがとうございます」
山田大将
「よかったね。明日は昼間、チャーシューだけ売ります。だって、みんなきちゃって…」
なんと、客の要望におされて余った豚肉で、一日延長して「焼き豚」だけを限定販売することに決めたのです。
急きょ、仕込み作業を始めることにした大将。午後9時をすぎ、ようやくひと気が途絶えるとこのように話しました。
好子さん
「(Q.大将も最後、お客さんの方に出てた。やはりお客さんが好き?)大好きですよ」
山田大将
「違うよ」
好子さん
「この人のほうが好きですよ、私より」
「(Q.終わってみて?)最高です。この仕事をしておいてよかった」
(「グッド!モーニング」2024年6月1日放送分より)
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