【戦争をさせない1000人委員会・立憲フォーラム10.19院内集会】
日本の国力の低下が著しい。国際社会におけるプレゼンスも、通貨の価値も、技術的なイノベーションも、学術的発信力も、すべて衰えている。どこかで致命的な「ボタンのかけ違え」があったからだろう。でも、日本の指導者たちは誰も誤りを認めないし、軌道修正を言い出さない。
栄枯盛衰は世の習いだから、国が衰えるのはよくあることである。どうして衰えたのか、原因を調べて、補修できるところがわかれば補修すればいい。人口が減るなら「小国寡民」にシフトすればいいだけの話だ。
でも、日本は違う。国がこれだけ衰えているのに、「わが国は絶好調で繁栄している」と言い募る人たちが政官財の要路を占めて、政策決定をしている。これは端的に病気である。
清朝末の中国人を侮って日本人は彼らを「東亜病夫」と呼んだ。いま東アジアで「病夫」は誰かと訊いたら、アジア隣邦の人たちは「日本かな」と言うだろう。「病夫」とは「あちこち不調の人間」のことではない。「あちこち不調なのに病識がない人間」のことである。日本は病んでいる。深<病んでいる。
内田樹(うちだたつる)
1950年生まれ。フランス文学者、武道家(合気道凱風館館長)、翻訳家、思想家、エッセイスト。立憲民主党パートナー。東京大学文学部卒。著書に『日本辺境論』、『夜明け前(が一番暗い)』、『寝ながら学べる構造主義』など多数。近著は白井聡さんとの共著『新しい戦前この国の“いま"を読み解<』(朝日新書)。