夫のことを『旦那(だんな)』といいますが、そもそもなぜ夫のことを「だんな」と呼ぶようになったのか、実は元来は仏教由来の言葉なのです。
「旦那(だんな)」「檀那(だんな)」とは、『布施』のこと。
『布施』とは、人に財物などを施したり、幸せを念じて教えを説くことを指し、仏教で教えられる6つの善い行い(六度万行)(六波羅密)の一つに数えられます。
昔のインドの言葉では「ダーナ」といい、「与える」という意味です。
お釈迦様がインドで「ダーナをしなさい」(人に幸せを与えなさい)と勧められました。
その「ダーナ」を中国の人が漢訳したのが『布施』です。
夫のことを「旦那(だんな)」と呼ぶのが、この「ダーナ」からきているのは、夫は家族を支え、妻子を守る、いわゆる「与える人」だからです。
40代のAさんは「最近よく自分が中学、高校時代の頃の父親の姿を思い出す」と語りました。
「あの頃の父親の年齢に自分が近づいたからでしょうね。私にはあの時の自分と同じく、中学生の息子がいますし」
その頃のAさんの目に映るお父さんの姿は、夜9~10時頃に帰宅し、居間で晩酌しながらテレビを見て、不機嫌そうにしている姿でした。
Aさんはそんなお父さんのことが好きになれなかったそうです。
父が帰るととたんに居間は居心地悪い空間になり、子供たちのお茶の間での団らんタイムは終わり、父親が着替えている間にAさんと兄弟はそそくさと子供部屋に行くのでした。
そんなある日、家族でフェミリーレストランに行った時のこと。
たまたま父親が仕事関係の人と出会ったらしく、家にいる時とは別人のように相手にニコニコと近づき、ハハハと声を上げて笑いながら相手と話し始めるのです。
「ふだんろくに受け答えしない寡黙な父が?!」
その光景は自分にとって衝撃で、それは家族全員そうだったらしく、みな呆然とその姿を眺めていました。
「家の中ではむっつり威張っているくせに、なんだよ、外ではあんなに愛想笑い浮かべてペコペコ頭下げて」とますます父親が俗っぽい小市民に見えてきて、その時以来、Aさんはよけい父親のことが嫌いになりました。
そんなAさんも社会人となり、営業の仕事に就き、結婚し、子供も中学生になりましたが、今になって当時の父親の姿が思い出されてくるそうです。
現在Aさんは営業成績を上げるのに必死で、お得意先を訪問したり、接待したりの日々で、毎月の営業ノルマ達成に心身をすり減らしています。
営業成績が棒グラフで表示され、常に叱咤され、成績が悪ければ給与にも響くし、リストラになるかもしれない。
そうなったらとても妻や子供を支えていけないのですから、疲れた身にむち打って仕事をしています。
一日が終わると心も体もくたくたで、家に帰るとテレビ観ながらぼーっとしているそうで、「あっ、あのときの父と同じだな」と気付くそうです。
「父もくたくただったんだな。今ならあのときファミレスで愛想笑いで近づいていった父の気持ちもよく分かる。家族を支えるために必死になっていた姿だったんだな」と、感謝の心がこみ上がり、今度は自分が支える番だと思うそうです。
このように妻や子供を支えるという重い責任を背負って一生懸命がんばっている一家の長の姿に「旦那」(与える人)と呼ぶようになったのでしょうね。
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1988年早稲田大学を中退し、仏教講師の道を目指す。
浄土真宗親鸞会で仏教講師の資格を取得、全国各地で公開講座を始める。
2010年からメールマガジンをはじめ、読者12000人の仏教最大級のメルマガ執筆
2014年からは全国をつなぐオンライン講座の動画レクチャーでも活動中。
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